群龍天に在り(webディレクターと歴史好きの雑記帳)

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中国、初の日本侵略(百紀辯證補正1)

中国は今でも尖閣諸島でしばしばフネをグルグル動かして侵略の意図を持っているが、そもそも中国人が日本侵略を考えたのはいつ頃からなのだろうか。これは史書に多少それらしい記録がある。三国時代の呉の孫権である。

みんな大好き、『正史三國志』にその話がある。
卷四十七·吳書二·吳主傳第二に曰く。
「二年春正月,(中略)遣將軍衛溫、諸葛直將甲士萬人浮海求夷洲及亶洲。亶洲在海中,長老傳言秦始皇帝遣方士徐福將童男童女數千人入海,求蓬萊神山及仙藥,止此洲不還。世相承有數萬家,其上人民,時有至會稽貨布,會稽東縣人海行,亦有遭風流移至亶洲者。所在絕遠,卒不可得至,但得夷洲數千人還。」

三国志はご存知、曹操、劉備、孫権の三人の争いなんですが(大雑把に言うとね。もちろん漢末群雄も居たわけだが)、そのうちの一人、孫権が西暦230年に突然、部下の将軍、衛溫と諸葛直に、
夷洲(台湾?海南島?済州島?)日本(亶洲)」を求めよ!と言ったんですね。しかしこの文は分かりにくいね。探検でもやりたかったのか海賊王に俺は成ると思ったみたいになってるし。なんで突然日本を襲おうとしたんでしょう。

亶洲(たんしゅう)は諸説ありますが「亶洲在海中,長老傳言秦始皇帝遣方士徐福將童男童女數千人入海,求蓬萊神山及仙藥,止此洲不還。世相承有數萬家,其上人民,時有至會稽貨布,會稽東縣人海行,亦有遭風流移至亶洲者。」とあるんで、徐福が行き着いた蓬莱の島国ってまぁ日本のことだというのが松下見林「異称日本伝」以来の定説です。亶(たん)は多禰国(たねのくに、現在の鹿児島県種子島・屋久島)の音写のようです。
(手塚隆義『孫権の夷洲・亶洲遠征について』
https://ci.nii.ac.jp/naid/110009391643)
昔の中国人は日本といえば薩摩琉球を思い出す癖があるようで、後世の小説『水滸後伝』でも「薩摩大隅の関白が攻めてきた」みたいなことを書いている。だから日本のことを亶洲というらしい。

夷洲はよくわからない島です。石原道博先生は韓国の済州島じゃないかといい、いや沖縄だろう、うんにゃ台湾ではないか、いやいや海南島だろうとか諸説があります。沖縄県だとしたらこれは確実に日本侵略ですが、残念ながら証拠がない。

さて、これを書き直した司馬光『資治通鑑』巻71では、
春,吳主使將軍衛溫、諸葛直將甲士萬人,浮海求夷洲、亶洲,欲俘其民以益眾。陸遜、全琮皆諫,以為:「桓王創基,兵不一旅。今江東見眾,自足圖事,不當遠涉不毛,萬里襲人,風波難測。又民易水土,必致疾疫,欲益更損,欲利反害。且其民猶禽獸,得之不足濟事,無之不足虧眾。」吳主不聽。」
だいぶ分かりやすいですね。どうも孫権は島を襲って夷洲人と日本人を奴隷にして人を増やそうとしていたようです。人手不足倒産を防ぐために移民導入みたいな発想だ。やることが野蛮ですが。

さて軍師の陸遜(りくそん)・全琮(ぜんそう)はびっくりして諌めました。しかし、「其民猶禽獸」って日本人を随分バカにした言い方ですが、要するに中国に日本人移民を入れても駄目ですよ、みたいなことを言っていたようです。

なお、結局この侵略は失敗。夷洲にはたどり着いて人狩りも出来たが、連れて行った兵士が死んだ数が多かったので人手不足が補えなかった。亶洲は到着にも失敗した。

さて、後世の江戸幕府の記録、徳川斉昭の『明訓一斑抄』だと、これは孫権が九州に攻めてきたが、武内宿禰(高良大明神)が撃退に成功した、ということになっております。だとすると日本侵略第一号は孫権、日本を守った人の第一号は武内宿禰ってことになるんですが…

さてこの武内宿禰(たけのうちのすくね)とは一体何者でありましょうか。それは次回の説き下しをみよ、ということで…今夜はここまでとさせていただきます。

参考文献)
陳寿『三国志』呉書
司馬光『資治通鑑』
手塚隆義論文『孫権の夷洲・亶洲遠征について』https://ci.nii.ac.jp/naid/110009391643
徳川斉昭『明訓一斑抄』(岩波書店・日本思想大系『近世武家思想』所収)

百紀辯證補正序

色々ツイッターで書いていた百田尚樹氏の『日本国紀』に漏れた史実をこれからブログで書こうと思う。私は文豪ではなく、文章も拙いが、『日本国紀』を読んで「これも載せたらもっとよかった」と思ったことが再三あるので、書くのである。漢文の序に「尚樹氏當世文豪,亦雜採諸家異説。百氏深憂不行皇國道、慨我朝屡逼中韓、國體衰微、成傳集愛國尊皇・威彊叡德・克定禍亂之人、言苦心著。
(尚樹氏は當世の文豪にして,亦た諸家の異説を雜採す。百田氏、深く皇國(日本)の道の行われざるを憂い、我が朝、屡(しばしば)中・韓にせまられ、國體衰微するを慨(なげ)き、愛國尊皇・威彊叡德・克定禍亂の人の傳を集成す、苦心の著と言うべし)とあるとおり、本稿はいわゆるコピペ云々の問題ではなく、ファンジンの如きものである。ご勘弁いただきたい。

以下は自分が書いた漢文の序である。令和の出典のごとく、これもまた下敷きになった文章がある。
推測してみると面白いかも知れない。

百紀辯證補正序

良史才之難尚矣。
夫子刪定春秋、聖門之高弟,而不能賛春秋一辭。平田篤胤大人、泣讀春秋。
於支那自秦漢迄明清,若司馬遷、陳夀、歐陽修、司馬光者,方其著書之時,豈不欲曲盡其善,而傳之無窮,然終亦未免後人之詆斥。史才之難,豈不信哉!
於本朝自神武迄平成、若太安万侶、北畠親房、新井君美、頼襄、徳富猪一郎、平泉澄、喜田貞吉等徒又尽善、史筆彫心鏤骨、然終亦未免後人之詆斥。史才之難,豈不信哉!
按,日本國紀乃百田氏尚樹據舊史所撰,尚樹氏當世文豪,亦雜採諸家異説。百氏深憂不行皇國道、慨我朝屡逼中韓、國體衰微、集成愛國尊皇・威彊叡德・克定禍亂之人傳、言苦心著。然終亦未免俗人等之詆斥。史才之難,豈不信哉!
(以下日本國紀略百紀、下同下略)
俊介性愚昧,然嗜奇愛博。從公之隙,竊嘗尋閲百紀,間有未通,則必反覆參究,或舛駁脱謬,則筆而記之。百紀遺漏成傳集名君忠臣、威彊叡德・克定禍亂之人、題百紀辯證補正。
令和元年五月十九日 草莽微臣松平俊介

自注:
平田篤胤大人、泣讀春秋。 西籍慨論。
新井君美 以行號。白石。
徳富猪一郎 以行號。蘇峰。
俗人 章句之儒也,其腐固宜。非識慮精深之才人。
威彊叡德・克定禍亂之人 威彊叡德曰武。克定禍亂曰武。(諡法解)

品田悦一氏の万葉集解釈への批判

こういう文章が有るが、かなり疑問である。

同じ東大教授の本郷和人氏同様、なにか東大教授というのは反権力、野党に迎合した発言をしないといけないという思想でも有るのかも知れないが、この文章の解釈は無理がある。

新元号「令和」に込められた本当の意味をガチ解説した東大教授の文章がすごい

https://galapgs.com/economics/politics/domestic/meaning-of-reiwa/

まず第一にポストモダンの「間テクスト性」なる概念を持ち出して前後の歌と無理やりくっつけているが、そうであれば巻五全体を考えるべきであり、前後だけを取り出す意味があまり良くわからない。しかも、この概念は途中から出てこなくなるのだ。そもそも万葉集をポストモダンで読めるかどうか。1996年に出現した思想を万葉の人が使えたとする根拠も出さないのはおかしい話である。

それから、「太宰府の役人の程度を考えて蘭亭集序だけを出典とした」というのも理解に苦しむ。同じ宴席にいる山上憶良はおそらく、当時の日本で一番、漢文学に通じた人であろう。そもそもこの序は旅人のものか憶良のものか断定できるだけの根拠を品田氏はお持ちなのであろうか。そんな断案を下せるほどの史料はなかったはずである。

そもそも先学はこの梅花の歌について「蘭亭集序だけを出典とした」などということはない。契沖『万葉代匠記』がもっとも大量の典拠を引用しているが、それらは精査が必要であるとはいえ、無視して良いものではない。

専門の学者ではない、江戸町奉行所吟味与力だった加藤千蔭の『万葉集略解』程度の簡便な古注でも、この歌の典拠として蘭亭序以外に
「屈原、宋玉神女賦、劉伶酒徳頌、梁陸スイ詩、張衡西京賦」を上げ、「この序は憶良の作れるならんと契沖言へり、さも有るべし」と言っているのである。品田氏はこれを覆せる根拠をお持ちであろうか。往昔の下級武士の片手間仕事でもこのくらいの出典は出している。なお、「間テクスト性」であればハイパーテキスト概念があるはずだが、なぜ蘭亭だけのリンクしか出されないのであろうか。

万葉集略解
(加藤千蔭『万葉集略解』日本古典全集より、国立国会図書館デジタルコレクション)

そうであるから、長屋王云々の説はほとんど井沢元彦の逆説の日本史同様の「迷推理」の域を出ないように思われる。そもそもそんな史料もない。根拠も薄弱過ぎる。
品田氏は無理やりこの「梅花の歌」に反権力性を付与しようとしているが、説明は到底納得の行くものではない。これは古今の解釈にない独自の説であるからこういう簡単なペーパーではなく堂々たる論文で世に問われるべきものではあるまいか。
テキストを虚心坦懐に読み、時局に迎合せず、先学の説をもう一度吟味してお話になったほうが良いのではないか。私のような一介の在野の野人ですらこれほどの疑問がある文章を東大教授ともあろう方が公になさるのはいささか疑問である。
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