徳島文理大教授で、歴史作家の八幡和郎氏によるちょっと変わった江戸300藩史である。

実は、この本、旧幕臣の戸川残花の『三百諸侯』や、幕府隠密の報告書『土芥寇讎記』(どかいこうしゅうき)などの野史をかなり参照して書かれているようで、幕府の正史『寛政重修諸家譜』などを元とした中嶋繁雄『大名の日本地図』(文春新書)などとは全く書き方が違う。

中嶋繁雄氏は出来るだけ公式史料を元に書こうとしているが、八幡和郎氏は歴史の裏を読もうとする。そして戸川や『土芥寇讎記』などの、非公式史料を結構引用し、「名君と言われている人でも本当に名君なのか?」「バカ殿は本当に馬鹿なのか?」を検証しようとする。

例えば、「保科正之は中村彰彦がしきりに名君だと賞賛しているが実態は違うだろ?お手盛りとバラマキ以外の功績は果たしてあるのか?」と追及したり、「徳川頼房はちょっと精神的にアレなんじゃないの?」とつついたり、相当辛辣な評価が多い。

この本は改訂されて文庫になっているが、新書版のほうが好みであった。終わり方が歌舞伎「将軍江戸を去る」を引用していて粋なので、こっちのほうが私の好みである。

軽い本だと思ったが結構ヘビーでした。