群龍天に在り(webディレクターと歴史好きの雑記帳)

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2014年05月

晋書のおバカ記事で打線組んだww

一部で人気の鐘なんとかさんに負けじと、晋書も本気を出すことにした。

1(二)孝行の徳!冬にたけのこが突然生える(孟宗伝)
2(遊)孝行の徳!冬の湖の氷が溶けた(王祥伝)
3(中)司馬家大スキャンダル!皇后が牛金と不倫発覚!(中宗元帝紀)
4(三)怪人!司馬懿、首180度回転!曹操ア然(高祖宣帝紀)
5(一)突然行方不明になっていた杜ソウさん、道端で発見(杜ソウ伝)
6(右)牛がしゃべった!あんた信じるか!(五行志)
7(左)干宝さん宅のメイドさん、生き埋めから10数年後、復活!(干宝伝)
8(捕)絶好調!張華さん、龍の肉食った!(張華伝)
9(投)中国のモーゼや!呉猛さん、長江を割る!(芸術伝・呉猛条)

全盛期のアライバにも比すべき1番・2番の「孝行の徳」の俊足巧打コンビに、
牛金・司馬懿・杜ソウというクリーンナップの重量打線など中々の布陣ではないかと思う。
なお、呉猛ー張華のバッテリーは田中将ー嶋に匹敵する名コンビではないか。
テイスト的にはメンチコピペと飛べ!必殺うらごろしがゴッチャになっているがご勘弁いただきたい。

「吳猛,豫章人也。少有孝行,夏日常手不驅蚊,懼其去己而噬親也。年四十,邑人丁義始授其神方。因還豫章,江波甚急,猛不假舟楫,以白羽扇畫水而渡,觀者異之。」(芸術伝呉猛伝)

いや、「江の波、甚だ急」な状態なのに白羽扇でサクッと川面を割って渡るとか、「觀者異之」どころじゃないだろ・・・

水滸伝人物元ネタ一覧

水滸伝の武将は歴史書に元ネタがあることは学界ではよく知られている(と思う)。
しかし、一般向けの本でこの話が出てくることは殆ど無い。とりあえず、最も有名な宋江三十六人について。
といっても、元ネタ不明の人も結構多い。
<ほぼ確定>
托塔天王 晁蓋→北宋初期の趙匡胤(宋の太祖)
天魁星“呼保義”宋江→北宋末の宋江+北宋初期の趙匡義(宋の太宗)
天機星“智多星”呉用→北宋初期の趙普
天勇星“大刀”關勝→北宋末の同名武将+三国志の関羽
天威星“雙鞭”呼延灼→北宋初期の呼延賛
天平星“船火兒”張橫→南宋
天損星“浪裏白跳”張順→南宋

晁蓋→宋の太祖 宋江→宋の太宗 呉用→趙普は既に明治以前から言われていたようだ。

http://d.hatena.ne.jp/soei-saito/20100611/1276263159によると、
「 『水滸伝』の回で、三木竹二がサミュエル・スマイルズやジョン・スチュワート・ミルの翻訳で有名な中村敬宇が『水滸伝』について述べたという説を紹介している。
 それによれば、『水滸伝』は宋の建国の歴史を下敷にしているのだという。宋の基を築いた太祖趙匡胤の片腕として活躍したのが趙普で、彼は太祖の弟であり帝位を継いだ太宗にもよく仕えた。ところで、太祖には成人した二人の息子がいたにもかかわらず弟が帝位を継いだことに対しては、その正当性に対して古来疑いがかけられており、太祖の部屋から斧の音が聞えてきたなどというまことしやかな話も伝えられている。こうしたことが『水滸伝』の下敷になっているというのである。
 つまり、一番はじめ梁山泊の頭領であった晁蓋が太祖に当り、それを継いだ宋江が太宗ということになる。趙普に当たるのが呉用で、最初は晁蓋に仕えて梁山泊を再興したが、宋江が仲間に加わってからは宋江と近しくなり、兄に当たる晁蓋を戦いにやり、その戦いで晁蓋は毒矢に当たって死ぬのだ。そして、晁蓋は梁山泊の基を築いた人物であるはずなのに、百八人の仲間には入っていない。こうしたことによって、暗に正史にひそむ不義を寓しているというわけである。」
 この説には宮崎市定氏(『水滸伝 虚構の中の史実』)、大塚秀高氏(『天書と泰山 : 『宣和遺事』よりみる『水滸伝』成立の謎』)も同じような主張をおこない、大塚氏は「野史にある宋太祖暗殺疑惑の話が、正史『宋史』では消されたものの、『続資治通鑑長編』『楊家将演義』等に残っており、水滸伝はそこから着想されたものだろう。晁蓋の晁は朝であり、宋朝=晁宋となり、晁蓋宋江の名は宋太祖暗殺疑惑を連想させるものだ」というのである。宮崎氏は趙匡胤が若いころに弱きを助け強きをくじく男伊達で、晁蓋とソックリなことを上げておられる。『飛龍全伝』なる趙匡胤が暴れまわる講談さえあるのだから
 もうひとつ私が気づいたこととして、趙普がしばしば「学究」と呼ばれていることがある。「学究」は無論、呉用のあざな。

南宋の《楽庵語録・付録》に以下の様な記述があるという。(http://news.ifeng.com/history/zhongguogudaishi/detail_2010_08/09/1911812_0.shtml)
太宗欲相趙普,或譏之曰:普山東学究,唯能読《論語》耳,太宗疑之,以告普。普曰:臣実不知書,但能読《論語》,佐太祖定天下,才用得半部,尚有一半,可以輔陛下。太宗釈然,卒相之。

つまり、趙普は山東学究(山東の田舎学者)でしかないと言われていたのである。

他の四名は宋史に登場する。呼延賛、楊業、張順はいずれも列伝にある。関勝は列伝はない。その他、大塚氏がいうように、九玄天女は趙匡胤の母、杜太后であろう。
 こうなってくると晁蓋・宋江周りの女性達もモデルがいそうである。ちなみに趙匡胤には三人の皇后がいた。梁山泊の女将も3人である。何かあるのだろうか?

天閒星“入雲龍”公孫勝→不明。三十六人の中で後から加えられた人らしい。

天雄星“豹子頭”林沖→不明。三十六人の中で後から加えられた人らしい。
天猛星“霹靂火”秦明


  天英星“小李廣”花榮  天貴星“小旋風”柴進

  天富星“撲天雕”李應  天滿星“美髯公”朱仝

  天孤星“花和尚”魯智深→北宋の悪僧(by『夷堅志』)  

  天暗星“青面獸”楊志→北宋の楊業  

  天空星“急先鋒”索超→唐の李愬?  天速星“神行太保”戴宗→『夷堅志』王超

  天殺星“黑旋風”李逵→北宋末の宋江+北宋初期の趙匡義の暗黒面

  天微星“九紋龍”史進→北宋末の盗賊  

  天劍星“立地太?”阮小二→北宋末の張栄  天平星“船火兒”張橫→南宋

  天罪星“短命二郎”阮小五→北宋末の張栄  天損星“浪裏白跳”張順→南宋

  天敗星“活閻羅”阮小七→北宋末の張栄  

  天慧星“?命三郎”石秀→章惇  

  天巧星“浪子”燕青→宋史・李邦彦

高廉→平妖伝の王則 王英→元末の武将

三国志おすすめ書籍

三国時代のことを書いた本は山のようにあるし、ボクも山のように読んできた。
ただ、その中でお勧めできる本は一握りである。中国書・日本書問わず色々上げてみよう。

1,正史三国志関係
百衲本三国志(台湾商務印書館)
 現存最古の正史三国志の版本を復刻したもの(影印本)。中華書局版の恣意的な本文改変を嫌うのであれば
これを読むしかない。一時期こればかり読んでいたが、最近は流石に疲れるので中華書局版も見るようになった。
三国志(中華書局)
 ネット上に転がっている正史三国志の原文はこれである。ところが、これ、高島俊男氏が指摘するように、
「劉備軍をヒイキするような妙な本文改変がある」という欠点がある。こーゆーのを金科玉条のごとく崇めるのは
ちょっとねえ。手頃で読みやすいからいいけどねー。
三国志選注
 これが日本の三国志読みの間で何の話題にもなっていないのはオカシイのではないか?
 正史三国志の文章には、実は結構読みづらい箇所がある(例:呉書呉主伝の評「孫權屈身忍辱任才尚計有勾踐之奇英人之傑矣」)。有勾踐之奇英人之傑矣を、駒田信二は「勾踐の奇英あり。人之傑なり」と読んで奇英という言葉の意味は良くわからないとしているが、この本では「勾踐の奇、英人之傑なり」と読み、注釈で「100人の人に優れるのを英という」としている。そういう原文の一字一句の訓詁は随分日本の三国志読みの間ではいい加減だと思う。三国志選注はそういう点をかなり真面目にやっている。もっと評価されていい本だ。中国書取扱店でも入手困難だが。
三国志集解
 知る人ぞ知る正史三国志の注釈だが、高島俊男氏が「これさえあれば従来の『三国志』研究がすべて居ながらにして見られるわけだ。無論陳寿の本文も裴松之の注もある。要するにもうほかにはなんにもいらないという、重宝この上ない本である」というのはかなり褒め過ぎだと思う。読むと分かるが、これ訓詁が弱く、地理関係に異様な力が入っているんですよ。これは清朝考証学における三国志研究が専ら地理の検討が主だった影響だと思う。多分、清朝の文字の獄を恐れて一番無害な地理研究ばかりになったのではないだろうか。今の中国と一緒で、政治的なことを下手に書くと変な難癖を付けられて処刑されかねなかった訳で、その影響が随所にある。あと、他の正史の引用も多少あるが、やはり省略が多いので、これだけに頼るのはかなり危険。あと、宮崎市定先生が断じている通り、清朝考証学者で三国志を研究した人は、一流の学者がいなかったとされている。従って、集解に引く学者の説は、どうかと思うものもある。
 例えば孫策伝集解の王懋竑の説「孫策は張昭・虞翻など一流を登用できた。武力だけの人ではないのだ。それに引き換え孫権と来たら、陸遜を使いこなせず、二流の呂蒙・凌統・甘寧など、孫策が登用した人物に比べればカスのような奴しか取れなかった。孫権が天下が取れないのは当たり前だ」という話は、学者としても少々見識を疑うところだ。張昭・虞翻って、そんなにすごかったかなあ。

2,三国志以外の歴史書
資治通鑑
 やっぱり読むべきでしょう。陳寿や裴松之をさんざん読み込んで、相当苦労して考えた後が見て取れますし、見識も高いです。胡三省の注も分かりやすく大変勉強になります。司馬遷『史記』と並ぶ二大名著と言われるだけのことは有ります。
私が大学で教えていただいた石川忠久先生が司馬光の評論とそれに付随する部分だけを訳した『資治通鑑選』(平凡社中国古典文学大系)は、部分訳ですけれども非常に素晴らしいものです。今は原文全文が中国語版ウィキにも上がっているので随分楽になりました。晋書より通鑑の方が当てになる(注:司馬光が今は消滅した五胡十六国各国の正史を読んでいて、そこから書いているため)というのもひどい話だが、ある意味事実です。
晋書
 腐れ縁というか、この本とも随分長い付き合いですが、どうも芸能週刊誌的というか、サイゾーとか週刊新潮のようなノリなんですよねえ。ただ、これ以外に晋代のまともな史料は殆どゼロですので、読まざるをえないというところです。
十八史略
 三国時代から魏晋南北朝の部分はどうも資治通鑑の略本のような作りですね。原文併載のもの(明治書院版と徳間文庫版)がおすすめ。くれぐれも、「新十八史略」や「小説十八史略」を読んで十八史略を読んだ気にならないで欲しいところです。あれは別物だし、十八史略原文に比べるとどうかと思うところが多いです。面白いところが取られず、変なところや歴史演義モノのネタが紛れ込んでいて、どうかと思います。
宋書
 三国志注でお馴染み、裴松之の親友・何承天が原型を作ったもの。裴松之注のノリで魏晋史の短命王朝の
散逸した史料をスタッフが一生懸命、一生懸命探して書いたことが評価され、晋書と違い後世の評価も高い。とくに志部分がいいですね。三国時代の地理はこの人達が随分調べています。四庫全書総目提要では「楽志は聖人の
教えを守り散逸した史料を集め、よくわからないものは句読を切らず後ろに付録としてつけている。
義例としてもっとも宜しい。」と褒めています。三国時代の漢詩を一生懸命集めてくれたので、我々が曹操の詩を読めるのは彼他のお陰です。呉の孫権が作らせた下手な漢詩は必見?!三国志ファンにはもっと知られてもいい本でしょう。あ、雄略天皇(倭王武、ヤマトタケルのモデルとされる)の雄大な上表文も読めます。古代日本人が中国に全く屈せず、堂々と権利を主張したことはもっと知られてもいいでしょう。
魏書(北魏書)
 曹操後継を称した元魏の正史。まあ、ここまで来ると読まなくてもいいでしょう。台湾ドラマ「北魏馮皇后」の元ネタ。著者・魏収(魏延の子孫ではなく、前漢の魏無知の子孫だといっている)がオリラジの藤森慎吾もかくやという有名なチャラ男で、編纂作業中にキーセンパーティーをやらかしていたことが発覚。
読者から「俺の先祖を悪く書いた」とクレームも出たため、「汚い歴史」と言われている。
なお、四庫全書総目提要や塚本善隆老師によると「たしかに著者はチャラいけど、先祖がどうのとかいう話、あれは言い過ぎ。そんなにひどい歴史書じゃないよ」とのこと。
 三国志関係の記述は薄め。ただ、東晋の司馬叡のことを「牛金のセガレであって司馬一族じゃない!」と言ってるのはある意味すごいです。
3,三国志演義関係書
三国志演義(中国各社)
 毛本は中国書取り扱い書店なら割と簡単に入手可能。漢文としては口語がまじりますが割と読みやすいでしょう(少なくとも晋書よりは)。原文で読むと、漢詩が読めるのがいいですね。以前、石川忠久先生に「三国志演義など、白話小説の漢詩はかなりくだらないという人がいるのですが、どうでしょうか?」とお聞きしたら「そんなことはないです。白話小説でも特に紅楼夢の詩はいいですよ」と教えていただいたことがあります。羅貫中なかなか詩人ですよ。唐の胡曾みたいなプロの漢詩人の詩も入っています。演義の訳本で漢詩を省いているものも有りますが、あれはちょっといただけないと思います。
三国志演義(立間祥介訳)
 まあ、これが一番面白いですね。訳も日本語としてこなれていると思います。学界での評価も高い(あの辛口の高島俊男氏が褒めているぐらいですから)。漢詩は漢文書き下し。
三国志演義(村上知行訳)
 これはこれで面白いのですが、漢詩の訳がちょっと頂けない。「董卓は怪獣ゴジラか?」とかいう訳文。あれ誰も止めなかったのかよ…

あと色々ありますが、吉川英治版は最早古典として別格でしょう。最近のものでは北方謙三版が私は好きですね。どちらかといえば正史三国志の小説版だと思いますが。文章が非常に漢文脈でメリハリがあって素晴らしいと思います。

4,三国時代の概説書
5,三国時代の専門書
6,その他雑書

これはまたあとで書きます。
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