群龍天に在り(webディレクターと歴史好きの雑記帳)

webディレクター兼雑誌記者の松平俊介が書いているブログです。

web技術者・web記者の松平俊介の江戸時代とweb技術についての雑記ブログです。web技術者の傍ら、雑誌記者として各種月刊誌・webメディア『ガジェット通信』に執筆してきました。 webの時事問題や、web制作、ウェブマーケティング、江戸時代史や『江戸しぐさ』批判などが主な執筆範囲。 これまで書いてきた主な記事→http://rensai.jp/author/touryuuuan

時事問題

憲法論は空理空論を弄ぶ「濮議」(ぼくぎ)になっていないか~禅問答をしている暇は今の日本にあるのか~

 5月3日が憲法記念日ということもあり、右・左の人々が盛んに集会を開いていたが、そこで語られている内容を見て私は非常に問題だと思った。右・左の人々は憲法いじりをして遊んでいるだけであって、こういう国家が災害や不況で苦しんでいる時、禅問答をして遊んでいるのは大変良くないことである。

 例えば左派は、「自衛隊は違憲だから解散すべき」「原発は即時停止」「行政府が憲法解釈を変えるのはクーデターだ!」「憲法は国民を縛らないもので権力者だけを縛る!」「天皇制は気に入らない!」「憲法は御成敗式目からの伝統!」

これら、バズワードにすぎなくなっている「立憲主義」と称するものは、尽く現憲法の条文及び判例から導き出しにくい、左派が勝手に言い出した「壊憲」でしかないのである。これらを見ていると大学紛争の頃の過去の日本を美化してそれにすがりつこうとする「復古主義」がかいま見える。「憲法は御成敗式目からの伝統!」という発言など復古主義の最たるものであろう。

 また、極右の人々は「今の憲法は敗戦時に押し付けられたものだ!汚らわしいから破棄して明治憲法に戻そう!
」という。その考え方は「洋服は西洋の押し付けだから和服を着るべき」「漢字は支那の文化だから神代文字を使うべき」というように国粋主義・攘夷主義にしかならない。

残念ながら「失われた10年」以来、マスコミでも「ハゲタカファンドはケシカラン!」「株式投資なんかマネーゲームだからやめちまえ」「原発も辞めましょう!みんなで江戸時代に帰って江戸しぐさを」というような、攘夷主義・復古主義が蔓延しており、結局その延長線上に「立憲主義」「押し付け憲法論」が浮上している所もあるのではないか。両者は結局コインのオモテウラにすぎない。改憲派から立憲主義に転向した人もいるではないか。

「押し付け憲法論」を唱える人々は「首相が現憲法を破棄すれば明治憲法に戻せる」という考え方の人も多いのであるが、そんな規定は現行憲法に存在しない。「自衛隊は違憲だから解散すべき」「天皇制は気に入らない!」などと言っても現憲法上、これまた出来もしないことである。出来もしないことを言うのは空理空論でしか無い。

 筆者は古い自民党の政治家が考えていたような、現憲法を「憲法の変遷」で弥縫しつつ、経済問題を第一に考えるべきだと思う護憲派であるが、現憲法の改正そのものには憲法の規定に沿った形で行われるのであれば国民の総意であるから従うし、現憲法に一読すると欠缺があるように見え、一々「憲法の変遷」を説明しなければならないというわかりにくさは問題だと思っている。本多作左衛門は世の中が治まらないのを憂え、漢文で書かれていたお触れの条文を仮名書きにしたところよく治まったという故事もあるではないか。法律がわかりにくいのは良いことではない。

しかし、憲法改正が現代日本の問題全てを解決できるものではない以上、優先順位は相当低いと考える。 経済問題・防衛問題のほうがはるかに重大事である。

 さて、このような憲法をめぐる空理空論の消費を見ると、筆者は中国の北宋王朝を滅ぼした壮大な空理空論「濮議」(ぼくぎ)を思い出さざるをえないのである。
「世界大百科事典 第2版」にはこうある。

「ぼくぎ【濮議】
中国,北宋代の政治問題。第4代仁宗皇帝(在位1022‐63)には嗣子がなく,濮安懿王(ぼくあん・いおう)の子趙曙(ちようしよ)を養子とし,仁宗没後,趙曙が英宗となった。そこで,英宗の実父で故人の濮王にどのような祭典上の資格を与えるかが問題となった。皇帝の直系の系統からはずれているから実父を伯父と呼べなどの意見まで現れた。欧陽修,司馬光らは二大陣営に分かれて論陣をはり英宗一代を空費する議論が展開された。」 

要するに、北宋王朝は財政問題や敵国の兵力増強で危機に瀕していたにも関わらず、「皇帝の父親の呼び方」などという、極めてどうでも良い空理空論を国を挙げてやっていたのである。その結果、北方に興った金国に攻められ、滅んでしまうのであった。

筆者には「立憲主義」「押し付け憲法論」は何れも亡国の論、 「濮議」(ぼくぎ)もどきに過ぎないように思うのであるがさあどうであろうか。

一部のメディアの「奨学金滞納者を徴兵しようとしている」という報道の検証

 ジャーナリストの田中龍作氏が、国会に議席を有する政党「生活の党と山本太郎となかまたち」の代表・山本太郎代議士からの情報として、以下の記事をブロゴスに書いている。しかし、この記事は幾つかの疑問がある。 まず、記事の主要部を引用する。 http://blogos.com/article/119169/
 「奨学金の返済延滞者は防衛省のインターンシップをやってもらえば」・・・  
文科省の有識者会議で「経済的徴兵制」を促す発言をしていた人物が、奨学金を貸し付ける日本学生支援機構の運営評議会委員であることが、山本太郎事務所の調べでわかった。  

 ヤミ金業者が貧乏人にカネを貸し付けておいて、払えなくなったら「カラダで返してもらおうじゃねえか」と脅して風俗に売り飛ばすのと同じ構図だ。マッチポンプでもある。  

 この人物は経済同友会・前副代表幹事の前原金一氏。奨学金の貸付を主たる事業とする「日本学生支援機構」の運営評議会委員である。  

 前原委員は昨年5月開かれた文科省の「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」で「返還の滞納者が誰なのか教えてほしい…(中略)防衛省などに頼み1年とか2年とかインターンシップをやってもらえば就職は良くなる。防衛省は考えてもいいと言っている」と発言していた。(文科省議事録より)  

 借金を返せなくなった貧乏人を軍隊に送り込むのが経済的徴兵制だ。よりによって日本学生支援機構の運営評議会委員が経済的徴兵制の実現を促したのである。悪質だ。  奨学金返済の延滞者リストが防衛省に渡っているとの情報もある。(下略)
(下線部は当方による)
事実だとすればとんでも無い話なのだが、そもそも事実誤認が多いようである。前原氏の発言そのものが、実は元の議事録を改変させられているのだ。前原氏の正しい発言は下記の通り。(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/057/gijiroku/1349929.htm)
【前原委員】  前回も申し上げたのですが,こういうやり方も一つあります。今の経済状況を考えると,労働市場は非常に好転しています。まず,延滞している人の年齢別人数を教えていただきたい。それから,延滞者が無職なのか,低収入なのか,あるいは病気なのかという情報をまず教えていただきたい。  今,労働市場から見ると絶好のチャンスですが,放っておいてもなかなかいい就職はできないと思うのです。前も提言したのですが,現業を持っている警察庁とか,消防庁とか,防衛省などに頼んで,1年とか2年のインターンシップをやってもらえば,就職というのはかなりよくなる。防衛省は,考えてもいいと言っています。前の学生・留学生課長の松尾課長にも申し上げました。文科省だけで解決しようとしないで,国を挙げて,厚生労働次官にも申し上げたのですが,百数十万人いる無職の者をいかに就職させるかというのは日本の将来に非常に大きな影響を与えるので,それをやってほしいとお願いしているのですよ。もちろん負担が重くなった人を救うことは大事だけれども,もっと大事なことは,きちんと就職できるようにしてあげることだと私は思います。ですから,是非,文科省からそういう働き掛けをしていただき,こういう情報をきちんとつかんだ上で,地方自治に関わる総務省にも,そういう動きをしていただくと有り難いのですが。
実は、奨学金を延滞者している人の実態がよくわからないので教えて欲しい、職がない人には中央官庁で若年層無業者に1ー2年インターンシップをやってもらってはどうか?という程度の話なのである。下線部は当方が付けた。田中龍作氏の改変はかなり恣意的なように思われる。

 元発言)「今の経済状況を考えると,労働市場は非常に好転しています。まず,延滞している人の年齢別人数を教えていただきたい。それから,延滞者が無職なのか,低収入なのか,あるいは病気なのかという情報をまず教えていただきたい。  今,労働市場から見ると絶好のチャンスですが,放っておいてもなかなかいい就職はできないと思うのです。」

 田中龍作氏の改変)「 返還の滞納者が誰なのか教えてほしい…(中略)」

ここがまず酷い改変である。前原氏は「返還の滞納者が誰なのか教えてほしい」とはひとことも言っていないのである。「年齢別人数と困窮の状況を教えて欲しい」と言ったのと「滞納者が誰か教えろ」では全く違うのではないか。

  元発言)「現業を持っている警察庁とか,消防庁とか,防衛省などに頼んで,1年とか2年のインターンシップをやってもらえば,就職というのはかなりよくなる。防衛省は,考えてもいいと言っています。前の学生・留学生課長の松尾課長にも申し上げました。文科省だけで解決しようとしないで,国を挙げて,厚生労働次官にも申し上げたのですが,百数十万人いる無職の者をいかに就職させるかというのは日本の将来に非常に大きな影響を与えるので,それをやってほしいとお願いしているのですよ。もちろん負担が重くなった人を救うことは大事だけれども,もっと大事なことは,きちんと就職できるようにしてあげることだと私は思います。ですから,是非,文科省からそういう働き掛けをしていただき,こういう情報をきちんとつかんだ上で,地方自治に関わる総務省にも,そういう動きをしていただくと有り難いのですが。」(下線筆者)

 田中龍作氏の改変) 「(中略)防衛省などに頼み1年とか2年とかインターンシップをやってもらえば就職は良くなる。防衛省は考えてもいいと言っている」

 これもひどい話である。なんと警察と消防を削除して防衛省だけ残し、その後段で総務省が出てくるのも削っている。ここまでの改変は報道の域を超えているのではないか。 
 いかにも「徴兵制」の話に仕立てあげようとして、元の文書を改ざんしたようなものである。

 むかし、右派の人で田中正明という人が有り、田中龍作氏と同じようなことをやって批判されたことがある。

 「 『松井石根大将の陣中日記』改竄問題
1985年に芙蓉書房から出版された。本書は、松井日記の記述に田中自身が「加筆・修正・削除」を加え、その記載内容が南京事件虚構説を補強する有力証拠であると主張するものである。その際、田中自身が「加筆・修正・削除」を加えたことについては読者に対し事前に説明しなかった。田中は「南京占領後の態度方針を説明するため外人記者団と会見をした」といった原文の松井の日記にない記述を加え、さらにそこに「松井大将が『南京虐殺』に関する質問を受けた様子は全くみられない」という注釈を加筆した。これらの修正は細部まで含めると300以上にのぼる。
この事実は、いわゆる「中間派」である板倉由明によって指摘された。板倉は、『発見された「改竄」は、脱落だけならまだしも「書き加え」まであり、しかもそれらすべて「南京虐殺事件否定」の方向で行なわれている。これは明らかに編者・田中氏の意図的行為であると断ぜざるを得ない』と評している。(下略)」(https://ja.wikipedia.org/wiki/田中正明)より

 右左によらず、元の史料や元の発言を改竄して自説を補強するようなことはすべきではないと思うがいかがであろうか。田中龍作氏・山本太郎代議士はやはり訂正・撤回すべきと考える。
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